ACT

思考は単なる物語であるー脱フュージョンー

今回は思考と出来事を切り離し、
やるべきことに集中するための手法である
”脱フュージョン”について解説していきます。
こんな方にオススメ

・自分はネガティブ人間だと思う
・自分は仕事ができないと思うことがある
・モヤモヤと感情が邪魔して集中できないことがある
・思うように目標を達成できないことが続いている
・他人の痛みを自分の痛みのように感じることがある

ACTでは思考が事実がどうかは重要ではありません。
大切なのは、その思考が自分にとって助けになるかどうか。

そうでないなら、注目する必要は全くないというのが
ACTの考え方です。

あなたは目標を決めて行動していても、
ネガティブな感情によって行動が変わり
結果失敗してしまうという経験はありませんか?

例えば営業の仕事で、商談に失敗し達成を逃したとします。
その時あなたの心はこう呟きます

あなた
あなた
今月も決めきれずに終わってしまった。
ほんと自分はダメなやつだ。
やっぱり営業向いてないのかなぁ…

この心の呟きはあなたにとって大切でしょうか?

自分を卑下した結果、さらにやる気が無くなり
日々の営業活動に集中できず、
また結果を出せなくなり
達成を逃しまた卑下をする…。

自分を卑下するネガティブな感情は
やるべき事は教えてくれませんし、
状況は一向に好転しません。

あなたがやるべきことは、
「行動を起こすこと」
「能力を向上させること」
「誰かに助けを求めること」
ではないでしょうか?

ACTでは思考が事実かどうかは重要ではありません。

それが自分の助けになるか、
有用かどうかが重要になります。

参考文献:幸福になりたいなら幸福になろうとしてはいけない: マインドフルネスから生まれた心理療法ACT入門

心は偉大なストーリーテラー

タイトルに「思考は単なる物語である」と書きましたが、
事実、人間の脳は思考と現実の区別がつかない仕組みになっています。

2つのストーリーを使って解説していきます。

今朝、私は新鮮なレモンを手に取り
明るい黄色の表皮を指で撫でてみた。
ゆっくりと撫でていると
その一つ一つの窪みを感じることができる。
鼻につけてその芳醇な香りを嗅いでみる。
そしてまな板にのせ半分に切り、
切ったレモンを手に取り口を開け
舌の上にぎゅっと絞った果汁を垂らす。

これを読んでいる間、あなたには何が起こったでしょうか?
あなたはレモンの色と形を「見て」
表皮の肌触りを「感じ」
新鮮なレモンの香りを「嗅いで」
人によっては口の中で唾液が出てきたのではないでしょうか?

しかし、あなたの前にレモンは存在していません。
ただ、レモンについての言葉が並べられただけ。
それでもこれらの言葉が脳に伝えられると
あなたは本物のレモンを前にしたような反応を起こしました。

(PCR検査の時レモンか梅干しのイメージで唾液出しませんか?笑)

もう一つ。
あなたはホラー小説を読んでいます。こんな話です。

主人公は友達と3人で肝試しをするため車で廃病院に向かいました。
病院につき、錆びた鉄の扉をよじ登って仲間の一人のAが入ろうとした時、
もう一人の仲間Bが腹痛を訴え、近くのコンビニまで戻ることに。
5分ほど車を走らせ、コンビニに到着しBはダッシュでコンビニのトイレに。
中々出てこないBに、心配になりAがトイレを見に行ったのですが、
そこにBの姿はありません。
するとBから電話がかかってき、
「なんで置いていくんだよー!」と言っている…。
Bはまだ廃病院にいるというのだ。
ではさっきトイレに行ったのは一体…??

いかがでしょうか?
あなたはどんな病院を想像しましたか?
コンビニはローソンですか?ファミマですか?
Aから電話がかかって来たとき、あなたはゾッとしませんでしたか?
鳥肌が立ったという人もいたのでは無いでしょうか?

ただ、あなたが見ていたのは廃病院でもコンビニでもなく
ただの黒い線や点から成る記号の羅列(言葉)です。

人間は言葉に大きく依存しています。
私たちが感知し、感じ、考え、観察し、想像し、交わることのできるものは全て
言葉でシンボル化できます。

時間、空間、人生、死、天国、地獄、現実には存在しない場所、最近の出来事などなど。

大事なのは、それらと共に現れる心のイメージや肉体的な感覚と思考を切り離すことです。

出来事→ 実際に起きたこと
思考→ 頭の中の言葉で単なる”物語”
イメージ→ 頭の中に浮かんだ映像
感覚→ 身体に起こる感じ

これらの区別を覚えておくことは重要です。

繰り返しになりますが、
大事なのはその思考が事実かどうかではなく、
自分の人生にとって役に立つかどうか。
自分が望む人生にプラスになるかどうかです。

フュージョンとは何か?

”脱”フュージョンの前にそもそもフュージョンとは何かを解説します。

フュージョンとは何かが混ざり合い混合する状態のこと。

例えばカフェオレはコーヒーと牛乳がしっかり混ざり合っており、
分けることはできませんよね。
(ドラゴンボールを知ってる方、あのフュージョンと意味は同じです)

ACTにおけるフュージョンは、
「思考」とそれが指し示すもの(物語と実際の出来事)が混じり合い一つになった状態です。

レモンの物語→酸っぱい気がする
ホラー小説→ゾッとして鳥肌が立つ

自分は無能だ(という物語)という言葉には、
本当に無能であるかのような反応を示す。

私は失敗する(という物語)という言葉には、
それが避けようの無い結末であるかのうように考えてしまう。

フュージョンの状態では、私たちはこのように振る舞う傾向があります。

7つのワークで脱フュージョン

思考と物語や出来事を分別する
脱フュージョンについて解説していきます。

①「という考え」ワーク
思考:自分はトッププレイヤーにはなれない
→私はトッププレイヤーになれない「という考え」を持っているんだな

自分がトップになれないという”物語”を作り出しているだけで、
本当にトップになれないという”事実”はありません。

私はリトルひろゆきさんを登場させ、
「それってあなたの感想ですよね?」
て自分に向かって言ってもらうようなイメージを作ることもあります(笑)

確かに…て一人でなっています(笑)

 

②思考の替え歌ワーク
替え歌はなんでもOKですが明るい歌がオススメ!

ハッピーバースデーでもジングルベルでもOKです。
→これが結構難しい。
替え歌にすること自体が難しいため、
自分の思考を取り出して音に乗せようとがんばることになります。

そうすると思考が切り離されて、それが単なる言葉であることに気づきます。

(私の場合割と上手くできてしまったので、個人差はありそうです)

さらにオススメはしっかりリズムに乗って笑顔で歌うこと。
騙されたと思って一度やってみてください。
人間の脳は言葉の意味よりも、自分の表情を優先し信じるようにできています。
逆に、ポジティブな言葉でも俯いて暗い表情でボソッと言ってしまうと
感情もネガティブになってしまいますので、
今日気分悪いなあと思ったら姿勢や表情に注意を向けてみるのもオススメです。

 

③物語にタイトルを
ネガティブな思考に気の利いたタイトルをつけておく!

その思考が出てきた時に、ただの物語だと一発で気づく事ができます!

個人的には、ちびまる子ちゃんやサザエさんをイメージすると
作りやすいし客観視しやすくなると思いました。

さーて来週のはまたくさんは〜
「はまたく 失注してまた酒に走るw」
「はまたく 上司に怒られ拗ねて帰るw」
の巻…!
みたいな感じですね。

 

④その思考は役に立つのか?
ACTは有効性史上主義
冷静に仕分けをしちゃいましょう。

役に立つなら注目し、活用を。
役に立たないなら注目に値しないので捨てちゃいましょう。

 

⑤思考を真面目に捉えるのをやめるワーク
思考は真面目に捉えなくて良い!

私はダメなやつだ→凹む
私はバナナだ!→クスっとくる

どちらも同じく単なる”思考”です。

「ダメなやつだ」と考えることも、
「私はバナナだ」と考えることも、
単なる物語であるということに変わりはありません。

思考を真面目に捉えないことで
思考に振り回されることも減ります。

 

⑥心に感謝するワーク
ネガティブな思考が芽生えたら
心に感謝する。

「ネガティブな心を持ち出してきてくれてありがとう!」
と心に言ってあげましょう。

ネガティブな感情は人類の生存戦略上、
歴史的には非常に優れた感情でした。

ですが今は不要の産物です。

この時代にまでわたしたちの命を繋いでこれたのは
紛れもなくネガティブな危機管理能力があってこそです。
数万年、数十万年前の祖先の方々に感謝の気持ちを込め、
「ネガティブなこの気持ちで今まで頑張ってくれたんだね。ありがとう。お疲れ様」と労ってあげましょう。

感謝を伝えると、感情と距離を取ることができます。
自分が思っているのではなく、心の中の別の自分が言っているだけだと気づきます。

感情は勝手に湧き上がるもので、抑えつけようとすると
より強い力で反発してきます。

絶対に抑えつけようとせずに、感謝の気持ちを伝えそっと見守ってあげましょう。

 

⑦変声ワーク
自分の好きなキャラクターにネガティブな言葉を言わせてみましょう!

それが単なる”言葉”であるということに気づくと思います。

 

いかがでしたでしょうか?
心が軽くなりましたでしょうか?
少し補足をさせていただきますと、
これら全てをやる必要は無いですし、
これらのワークに今後時間を費やさなければならないということでもありません。
変声のワークがもっと重大で危機迫る状況においても有効かというと
決してそういうわけではありません。
脱フュージョンは、問題を軽く捉えたり笑い飛ばすためのものでもありません。

脱フュージョンは、私たちを思考の抑圧から解放し、時間やエネルギー
注意力を思い悩むことに使わず、もっと有益なことに向けること目的としています。

気分を良くすることを目的としているわけでもなく、
あるがままの状態、ただの言葉の羅列であるということに気づき
より大切なことに時間を費やすための足掛かりが脱フュージョンの真意です。

脱フュージョンが習慣になれば、意識せずとも思考と物語を切り離し
ネガティブな感情に振り回されることも減ると思います。

そうなればきっと今よりもっと大切なことに費やす時間が増えるはずです。

脱フュージョンを活用して、今よりもっと楽しい人生をスタートさせましょう!